月夜に照らされ美しさを増す青年。
少しはだけた黒い着流しから見える透き通るような白い肌を輝かせる。
漆黒の髪が艶やかに靡き黒い瞳は妖艶に光を放つ。
そしてポツリ、呟く。
「…美月ちゃん…」
愛しくその名を呼ぶ。
冬にも関わらず綺麗な夜空を見つめ、目を閉じる。
また彼女の声、笑顔を思い浮かべるのだ。
青年は胸元の服を強く握った。
目を少し開き悔しそうに言った。
「…病、だろうか」
彼女を想い過ぎる自分を“病”と名付ける。
恋をした事に気付くことなく。
「…会いたいなんて、わがままですよね…」
月に向かって問い掛けた。