冬が来た。
まだ雪は降っていないが厳しい寒さが身を震わせる。
そしてあたしはまた違う震えをしていた。

自室で縮こまり、翔太くんを隣に。


「…美月」

「…」

「おい」

「…」


顔を上げられない。
不機嫌気味に翔太くんは溜め息をついていた。


これでもう10日間、遥と会っていない。
いや、会わせてもらえない。

どんなに会いたくても、会えないのだ。


隣にいる翔太くんが遥に宣戦布告のような事を言うだけ言って、あたしを遥の傍に近付けない。
それと、あたしは翔太くんに言われてしまったのだ。
あの日の帰り道。
水城神社を出たらすぐ。




『…美月はあいつが本当に好きなのか?』





と。
あたしは好きなんだと自覚している。
たが、“本当に”っていう言葉が引っ掛かって考えがつかない。


あたしは遥が好き。
だけど自信が持てず正直怖い。


「美――」

「怖いよ…」

「…え」


あたしは言葉に出していた。
本当に好きなのかわからない。
だったらなぜ、今まであたしは遥を想い続けてきたのか。
なぜ口付けを交わし、抱き締めあったのか。


「…もう」


翔太くんは縮こまるあたしを抱き締めた。
冷たい身体が徐々に暖まって行く。


「…もう、あいつの事なんか忘れろよ」

あたしは首を左右に振った。
忘れることなんかできない。
だって、あたしの心と身体、脳内も全て。

遥でいっぱいなのだから。


「……」


会いたいよ、遥。



あたしの願いは儚く終わる。


「…俺だけを、見て」


そう言って翔太くんはあたしの頭を優しく撫で、おでこにキスした。

胸が不自然にうるさい。
警告を知らせる鐘ではなく。
恋のようなドキドキでもない。

ただ、胸騒ぎがした。