なんとなく涼しい風があたしを撫でる。
道端の端に集まる落ち葉。
風に煽られカサカサと音を立てる。

「だいぶ散ってるなー…」

しばらくしているとあたしは水城神社の階段を半分程登っていた。
そして振り返り景色を眺める。

あちこちの木々が色を変え、風が吹く度散っていっている。

あたしはまた足を進め、階段を登りきり髪を整え、前を向いた、ら。

「…へ?」

「あ、美月ちゃんだ。こんにちは」

そこには遥がいた。
遥はほうきを持っていて枯れ葉を参道から掃き出していた。

「えーっと…」

「あ、もしかして…」

遥はほうきを木の側に置き、手を叩きあたしに近付いてきた。

そして、耳元でこう言った。


「…口付けの仕方、教えてあげるよ」

「!!」

あたしの顔は一瞬にして真っ赤に染まった。

「あ、真っ赤だ」

遥は眩しいくらいの笑顔をあたしに向け、手を握った。

「さ、行こうか」

「…はい」

そう言われ、あたしたちは踊り場ではない場所へと向かった。
花がたくさん咲き、綺麗な場所へ。

「ここは…どこ?」

「ん?俺の秘密基地」

この季節には合わない、いや絶対に秋ではない景色にあたしは唖然とする。

「こんなところ、水城神社にあったんだ…」

「……ないよ」

「え…?」

遥は目を細め考え込むが。

「ううん。何でもない」

また笑顔を見せた。

…ズルいよ、遥は。
あたしがその笑顔で何回心を揺さぶられたのかも知らないくせに。

あたしは心の中で呟く、が。
どうやらそれは心の中だけでなく、口にも出でていたらしい。


「…全部、丸聞こえだけど」

「あっ、あの、そのー…」

「ばか」

遥は力強くあたしの腕を引きあたしを抱き締めた。