10月中旬。
さすがに羽織ものが恋しくなる時期。
食欲も上がり、まさに食欲の秋になりかけていた。
「危ない、危ない…」
あたしはおまんじゅうの入った箱に手を付けていた。
この前花恋と美波から貰ったお土産に手を出していた。
無意識って恐ろしい。
あたしはおまんじゅうの入った箱を台所に持っていき、自分の部屋へと戻って行く。
緑色の畳に端に敷き詰められたタンスや鞄類。
そして散りばめられた裁縫セットに目を向けた。
昨日服を縫ったのだ。
丁度ブラウスのボタンが取れてしまったからである。
「はぁー…」
あたしは溜め息を大袈裟に吐きながら膝を折り、しゃがみこむ。
散らばった細い銀の針を器用に取り針刺しに刺していく。
色とりどりの糸も巻き直し、裁縫セットに入れていく。
「…あ」
あたしはまだ一つ転がっていた針を取った。
「…っ!」
針が指に刺さっていまい、お尻を畳に着けた。
指を見てみると赤い雫がプツリと。
あたしはその指をくわえると針刺しに針を刺し、裁縫セットを片付けた。
そしてとぼとぼと絆創膏を貼り、縁側に腰を下ろした。
「暇だなー…」
足をぶらつかせ流れ行く雲をただひたすら目で追い、暇を潰していた。
だけどまだ暇なのだ。
現在午後1時。
遥に会いに行くにはまだ早い時間帯。
あたしは早く会いたいと思うが時間には抗えない事を改めて感じる。
だが。
「行こっかな…」
あたしは独り言のように呟き、玄関に向かった。