私の通う高校を紹介しておこう。

 都道府県という大きな区分けで考えると長野県に位置し、もう少し細かく見ると、文化遺産「松本城」の付近に存在し、さらに深く掘り下げると、ただでさえ標高が高い長野の土地よりもさらに高い場所に位置する、立地条件最悪の高校、それが私の通学する高校である。

少しばかり高い位置に存在すると先に書いたが、それが理由で登校の際は徒歩・自転車通学者を急斜面で散々に苦しめ、冬は学び舎に容赦なく冷たい風が遊びにくる。おまけに全棟木造校舎ゆえ、歩くだけで床は軋み、窓の縁を見ればネズミさんたちの公衆便所が確認され、「大切にするべきだ」と壁に画鋲を刺すことすら許されない。

 さらにタチが悪いことに、学校側は生徒に学校そのものを尊敬せよと強要しているため、何かと言えば伝統伝統と騒ぎ立てる。バックには卒業生が学校支援団体を組んでおり、それらに所属する大人は目も当てられないほど高校を愛しているのだ。
  もしかすると、私の頑固は最悪の立地環境と悪しき風潮に対して常に逆向きに歩みを進めて来たために高校で培われたものなのかと考えたこともある。幼い頃を振返れば柔軟な思考を駆使している私の姿があるはずなのである。

 ところがそれだけ学校を愛するものがいても文化祭というのは何処も同じようなもので、あらゆる部活動が模擬店の営業・活動成果をまとめたレポートを掲示するという、ありがちな光景に我が高校も支配されていた。
 六月に似合わない猛暑に包まれた中庭には、フランクフルト・かき氷・焼きそばなどの模擬店代表格が多大なスペースを占領し、グラウンドでは弓道部が弓道部らしからぬ装備品で射的屋なんぞを営業している。

 講堂に設置された特設ステージでは笛の合図と共に、マナーを重んずるはずの日本人が開くとは思えないようなイベントが開催されている。——早食い大会・半裸ダンス・顔面落書き大会——