「竹井クン、これ、ありがと。」

放課後、竹井クンに借りていたジャ○プを返すと、彼からは笑顔を返された。



「いえいえ。・・・今週は面白そうな新連載があったね」

竹井クンが、表紙を見ながらそういう。

「あのRPGっぽいやつだよね。私も好きな感じだったなー」


私は、さっき読んだ漫画の内容を思い出す。
面白かったから流行りそうな気がする。



「花本サンもそう思う？俺もなんだよね」


嬉しそうに会話を返してくれる。
私もそれが楽しくて、ついつい話を弾ませてしまう。



「・・・おい、竹！掃除当番だろっ、お前」


ぐい、とこちらを向いて座っていた竹くんの首根っこが、誰かによって掴まれた。
まるで子犬がイタズラをしているのが飼い主にバレたかのようなシチュエーションだ。


「あ、孝太」

そうしていたのは、梨子の彼氏の孝太だった。
突然のことで、私は唖然としていた。


「よう、花本。こいつ掃除当番だから借りてくぜ？」
「あ、ああ。そういえば。ごめんごめん」


楽しくてつい時間を忘れてしまってた・・。



「孝太～～離せー！離したら掃除するから！」


竹井クンは、孝太の手から逃れようと足掻いている。
本当に、まるで子犬のようだ。


「っと、じゃあ掃除の邪魔しちゃ悪いし、行くね」
「おお、じゃあな花本」
「っ、花本サン、またね！」

二人に手を振る。


教室を出ようとすると、
目の前には、複雑そうな顔をした梨子と
少し寂しそうな顔をした由架がいた。




（あ、やば・・・）



仮にも、由架の好きな人と楽しげに話してしまっていた。


「ゆ、由架・・」
「ほらっ、さお！帰ろ？」

私が声を掛けようとすると、ぱっと笑顔を見せて、笑う。


（由架・・・。）


「うんうん、帰ろ帰ろ！」

梨子も笑顔で頷く。
そして私の背中を引っ張って、教室を出て行った。