「ごめん由架、聞けなかった」




竹井くんから情報を聞き出せなかったので、素直に謝る。
由架は申し訳なさそうに笑顔をつくってから、首を横に振った。

「いいのいいの、逆にあんなこと頼んでごめんね？」
「ううん、応援してるんだから、それくらいさせてよ！」


私はそう言って得意げな顔をする。
・・・ああ、いらん見栄を張るな、私！




「アタシが調べてあげよっかー？竹のじょ・う・ほ・う♪」




梨子がにやりと笑って言う。



「いいの？」
「孝太が竹と仲良いし、何か分かるかもよ？」

孝太、というのはさっきも言った通り梨子の彼氏だ。
竹井くんと仲が良いらしい。

あと、”竹”ていうのは竹井くんのあだ名。


私も花本沙織(ﾊﾅﾓﾄ ｻｵﾘ)、という立派な名前があるが”さお”なんて呼ばれている。
このクラスは人にあだ名をつけたがる人が多いらしい。（主に梨子）







「由架はいーとして、沙織はどうなの？好きな人いないわけ？」




梨子が若干問い詰めるように聞いてくる。
私は残念ながら、と呟いて首を横に振る。


「アンタねぇ・・・もったいない」
「もったいない？」
「アンタは自分を過小評価しすぎてるの。」
「？」

梨子は時々こうやって意味不明なお説教をしてくる。
まぁ、別に嫌いじゃないんだけど、




「さおって、男嫌いだよね？」


由架が少し心配そうな声色で言った。




「あ～・・・確かに」


梨子も、何か上の空気味に呟く。

「こないだ、男の先生に話しかけられた時心底ウザそーだったもんね。」
「あの先生話し長いし気持ち悪いから」
「否定は出来ない。」


梨子が断言してからくつくつと笑う。
そしていたずらっぽい笑みを浮かべる。

「で、女の後輩からは受ける、と。」

嫌味にしか聞こえないのは何故だろう。





「何が言いたいのかな、梨子ちゃ～ん？」


私も嫌味っぽく聞き返す。
梨子はなんでもなーいと笑いながら席に戻っていった。



それを見た由架もくすくすと笑って、私に笑顔を向けてから席に戻っていった。







（・・・もう、なんなの）








そう心の中で呟いて、私も席に戻っていった。