何も、付いてない…。

ほっと胸を撫で下ろすと、結城くんを怪訝そうに見つめる。


「もう!何も付いてないじゃない」


「ああ、付いてないよ?」


少し起こり気味に言っても、彼に効果は期待できないらしい。

面白そうに目を細めるだけ。


「じゃあ何でそんなに私のこと見てるの?
何か、恥ずかしいからやめてもらいたいんだけど…」


語尾を段々小さくして言うと。


「へぇ…それじゃあ何か付いてないと見ちゃいけないのかい?」


悲しいね…なんて目を伏せて言われたら。


「そ、そういうわけじゃ、ないけど…」


って言うしかないじゃない!

すると結城くんは、さっきの悲しそうな顔から一変して、意地悪そうに微笑んで。

私の顎を持ち上げた。


私を映す琥珀色の瞳。

同じように私の瞳にも、彼が映っているだろう。


彼の瞳はとても透きとおっていて。

思わず目を奪われる。


今見えるのは、勝ち気で、自信が満ち溢れているような。

綺麗な瞳。

それとは逆に、時々見せる哀しげな、切ない瞳は。

私の胸をジリジリと痛めつける。


でも今は勝ち気な色だから要注意!

なんて考えてたら。


10cmくらいしかなかった顔との距離が、5cmくらいにまで縮まって。


「何で見てたか、教えて欲しい?」


妙に色っぽい声でそう尋ねる。


「う、うん」


私は顎を掴まれつつ、頑張ってこくこくと頷く。

すると結城くんは持ち上げてた私の顎を解放して。

椅子に腰掛ける。


「ふふ…すぐ赤くなって、可愛いね」


「へ?!かっ…可愛??!」


「ほら、また赤くなった」


悪戯っぽく微笑みながら私の顔を指差す。

それに思わず両手で頬を挟み込むと。

何となく熱いような気もする………。


って違う違う!

今、絶対ごまかした!!


「もう!はぐらかさないで!!」


「はぐらかしてなんかいないさ。事実だよ?」


怒っている私とは対照的に、テーブルに肘をつきながら、

無邪気な笑顔を向ける結城くん。


「っ~~~!結城くんの馬鹿ッ!!」