「な、なっ、なっ、なーーーっ!!!」


“なんでもっと早く教えてくれなかったの!!”

って言いたいのに、上手く舌がまわらない。


おかげで意味不明な言葉を発してしまう。


「くすくす、大丈夫かい?」


ポンポンと布団越しに頭を叩かれて、

まるで亀のように顔だけひょっこりだした。


「だ、大丈夫じゃない!結城くんの変態!!」


「変態だなんて心外だね。自分から見せたくせにさ」


結城くんはふふ、と微笑む。

それに私は再び布団を被って叫んだ。


「結城くんの馬鹿ーっ!」


「おいおい。しお……――」


「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ーーっ!!!」


外から結城くんの困ったような声が聞こえたけど。

そんなの無視!


私は結城くんに馬鹿と叫び続けた。


すると、突然。

なぜか今まで真っ暗だった視界に、枕が見えて。

結城くんの顔も見えた。

そこでようやく布団が剥がされたことに気付く。


「ちょっ……」


「悪かったから、機嫌なおしてよ。ほら」


そう言いながら私に見せてきたのは、灰色のワンピース。

胸元に赤いリボンが付いてて、手元はブラウスが折られた感じ。

それに肩がふんわりしてる形の。


これって……。


「制…服……?」


「ご名答」


結城くんは片目をパチンと瞑ると、

私に制服をハンガーごと渡した。


そしてドアに向かって、肩越しに振り返り。


「着替えたらリビング。朝食済んだら行くよ」


「あ…うん」


彼はそう言い残して部屋を出ていった。


パタンとドアが閉まったのを確認して、改めて制服を見つめる。


可愛い制服……。

私立っぽいな。

私、この学校に通ってたのかな?


……………。


考えることはたくさんあるけど。

何か学校行けるって嬉しいな…。


「ふふ、着てみよ!」


たぶん、この時私は満面の笑みでそう言っただろう。


そして着替え始めた。