「いや?ふふ…さっきの、もっかい言ってごらん?」


「さっきのって……“何がそんなに面白いの”?」


「それの前」


「まえ?」


軽く腕を組んで、首を傾げながら頭をフル回転させる。


前?

前…まえ…マエ………。


前って言ったら、学校が楽しい楽しくないって話………。



あ!これか!!



思わず両手を打って、チラリと前を見れば、楽しそうな結城くんと目が合った。


それにちょっと恨めしげな視線を投げ掛けてみる。

けど見事に笑顔でかわされてしまった。


余裕そうに笑ってるけど……。

私にだって分かったんだから!


「“万が一楽しくなかったら、私の高校生活を乱してる奴をぶっ飛ばして、楽しくするよ”」


視線は外さないまま、少し得意気に言うと


「ぷっ、上等」


なんて頭をよしよし、と撫でられてしまった。


「も~結城くんったらこんなので笑ってたの?!」


「そうだよ?」


彼にしては珍しい、年相応の笑顔で返されたら

もうため息しかでない。


肩を落として、彼を横目で見てからドアに向かう。


「どこへ行くんだい?」


「はあ……学校。早く行かないと遅刻するよ?」


今度は聞こえるくらい大きなため息をついて、肩越しに振り返り先を促す。


「へえ…その格好で?」


「へ?」


結城くんの言ってる意味が分からなくて、首を傾げると。


悪戯っぽく微笑む結城くんの姿があった。


そして私の顎を掴んで、軽く上を向かされる。


「だーかーら、その格好で行くのかい?」


今度は妖艶な微笑み。


その格好って………?


眉を潜めて、恐る恐る自分を見ると。

昨日結城くんから貰った、ピンク地にさくらんぼ柄のパジャマ…………。



ならまだしも、見事にボタンが外れて、前がはだけた姿だった。



「き…きゃあああああっ!!」


「わっ…」



私は結城くんを突き飛ばすと、脱兎のごとくベッドに飛び込んだ。