「なあ、翔也兄ちゃん、明後日休みやんかあ?」

「ん?あぁ、日曜日やなあ~」

翔也兄ちゃんは、工場で仕事をしていて金曜日と日曜日が休み。

「優香ちゃんとデートするん?」

優香ちゃんとは、お兄ちゃんの彼女。幼なじみで中学からずっと付き合っている。幼なじみだしラブラブって感じじゃなくて、もう家族みたいな存在。しっかり者だから怠け者のお兄ちゃんとは、なかなかいいバランスを保っている。

「まあ…会うつもりやけど、優香も休みやしな。」

優香ちゃんは、頭がよくて偏差値の高い大学に通う女子大生。

「悪いねんけど、めっちゃんの面倒見てくれへん?」

「…なんで?飛鳥…男できたん?」

「はっ!?ちゃ、ちゃうし!!」

兄ちゃんが真面目な顔をして聞いてくるから、焦ってすぐに否定した。

「な~んや、じゃあなんなん?」

「じーつーはー…」

「なんやねん?」

「…東京行ってくんねん…」

「はぁ!?」

「あすかちゃん東京行くん!?」

違う部屋にいた恵も盗み聞きしてたらしく扉を開けて叫んだ。

そう、ここは大阪。しかも結構田舎のところに住んでいる。

「お前なあ~、東京行ったら恥かくだけやで」

「あすかちゃん、めっちゃんも連れてってよお」

二人で一斉に言われまくる私…。

「友達の親戚が東京に住んでて…遊びにおいでってゆうから行こかぁ~みたいな話になってぇ~…」

「………。」

黙り込む兄…。めっちゃんもへんな空気になってしまっているからキョロキョロしていた。

「…新幹線とかの移動費どうするん?」

うん、うちが一番きにしているところだった。正直、私達の家には遊びに行く余裕はない。

そりゃあ、親戚からの仕送りと兄ちゃんの仕事の分とうちのバイト代だけで生活してるから実はかなりしんどい。