「ちょっと、克哉!

何考えてんの!?　これって

拉致やで? 解ってる??」


「あぁ、そうかもな。」



急発進した車の中、

彼は冷静に答えた。


前の夫の

"強引さの延長"だと思えば

別に怖くもなんともない。

多分、

彼も同じく犯罪などとは

微塵も認識していない。



「一体どこへ連れて行く気?」



ハア、と溜息を吐き出し

諦めて

一旦シートに背中を預けた。

だが・・、

窓の外の景色からだんだん

ネオンの灯りが

無くなって行くのに不安になる。

落ち着かずシートから身を

起したあたしのそれを察したか、

まるで安心させる様に呟いた。



「夜景が見えるところだ。」

「・・へぇ? 何でわざわざ?」

「普通に誘ってデートしたか?」



子供もおらんのに何が悲しくて

別れたダンナと

デートせなアカンねん・・。

そう思っていたところだった。


「ここだ」


着いたのは潰れたコイン洗車場。

まあ・・確かに夜景は見える。


竹藪みたいな隙間からチラチラ、

町の明かりが覗いている程度だ。



「何でコッチ側に着けたんよ。」

「排ガスで竹が可哀相だろ?」



全く、いつからそんなに地球に

優しい男になってん。

似非エコ医者め。