そう思ったら

居ても立っても居られなくて。

車のキーを引っ掴み、

二日酔いの重い体で

ドアを勢い良く閉めていた。



( 先に電話すりゃよかった )



当たり前の事が出来なかった

自分に苦笑した。

なぜこんなにも冷静で

居られないのかと・・。


そう思いつつ、

彼女のマンション前で

タクシーを降りる。


パーキングを借りてるのは

ママのお下がりの車をその内

譲って貰うからと云っていた。


そんな事を思い出しながら。

エレベーターを上がり三階へ。



( あれはナギ?

じゃない・・、エ、妊婦? )


部屋のドアの前で、

両脚を放り出しリュックを背に

座り込んでいる女がいた。


少し突き出たお腹を摩り、

近くまで来た神足を

ゆっくり見上げてる。



「彼女、居ないみたいですよ。」

「ええ・・、此処で何を?」


「待ってるんです。

・・・帰って来るまで。」



そりゃ解るが、何の為に?

身重の体に差し障るのでは?


まだ彼女とそこまで

仲が良いわけじゃないから

解らないが携帯の時間は

直き、昼になろうとしてる。



「直ぐには

戻らないんじゃない?」


「そう・・ですか。」



きっと

大阪から出てきたのだろう。

彼女にも関西弁の発音があった。