「こんなものしかなくて。」



ナギ・・・。こんな奴らに

ランチのパスタなんか

振る舞う事なんてなかったのに。


俺の大好きな、

彼女の作る和風パスタ。


例え、オイシイと思っても

口に出して褒め称えるヤツは

此処にはいないってのに・・。



「あら、料理もなさるのね?」

「少しですけど。」



バカ女! お前は黙ってろ!

チャーハンすらまともに

作れねえクセに!


・・俺は知ってる。

ナギが話してくれたから・・。


彼女は一人っ子。

しかも、遅くに出来た子だった。


早くに母を癌で亡くし、

それからずっと、洋食屋を

やってた父と二人暮らし。


昔はお父さんと一緒に

新しいメニューを考えたりした。


"コテコテのオモロいオヤジ"。

彼女はそう云ってた。

大好きだったって・・。


そのお父さんも、

看護学校卒業後に

脳溢血で倒れ亡くなったそうだ。



「美味い」



彼女はその一言で

いつもほっこりと微笑む。


どちらかと言えば、そちらの

方が俺を満足させたりして。



「「・・・・・!」」



ほら、

一口、二口食べて驚いてる。


母も自分好みの味だったらしい。

無言で実は味分析してるんだ。



・・何とか言えばいいのに。