ピンポーン・・


良く来客のある日だなあって

思いつつも

その嫌な空気から逃れるのに

丁度良かったやけど・・。




「こんにちわぁ」




出た。




なんで?

その声に反応して彼まで

玄関でポカンとしてた。



「あらぁ、何年ブリっ?」

「わー! お母様!!」



「「・・・・・。」」




どうやら・・この女、

牧美津子と

母上は顔見知りらしい。


上げたくもないのに

母上が勝手に上がらせたりして。



「で・・こんなプランは? 見て

貰おうと思って考えてきたの。」


「あらー、貴方大人ねえっ。

たいしたもんだわ・・!」



「「・・・。」」




当然、前カノへの褒め言葉だ。


明らかに

"なんで別れちゃったの?"

・・・みたいな。


今のあたしの気持ち?

そりゃ当然、


『ムカムカ、ムッカーァ・・!』


に、決まってる。



それでも”忍・忍”と

ハットリ君みたいに頭の中、

唱えながら。

あたしは席にも着かず、

彼女の差し出したパンフレット

を黙って受け取った。


ところが、それをあたしから

奪い、彼が彼女に付き返した。



「会社にアサイチで連絡したん

だけど。"二度と来るな"って。」

「こら!」

「いや、冗談じゃないから。」



"二度と来るな"はオーバー

だけど、彼の気持ち的には

ソレだったのだろう・・。



「う・・知らなかった。

ゴメンなさい・・きっと

行き違いがあったのね・・!」



ざぁーとらしいぃー。

(訳:わざとらしいー)



涙ぐんだりして。そうなると

母上が彼を睨むのは当然で。



「アンタね! 美津子ちゃんが

どんな思いで来たか・・!」



いーえ、おかーさま。

そりゃ、解って堪るか! ですから。