「随分、遅かったわね。」
「ごめんなさいね。それで、何の用?私、早く帰りたいんだけど。」
と、いつもの調子で言う。
「宝城院さん、転入してきた日からですけど、草凪君と仲良いですよね。」
「だから?」
惺來の冷静な態度にイライラしてきたのか、だんだん顔に怒りの色が見えてきた。
「とりあえず、邪魔なんです!」
「は?」
「転入してきて一ヶ月、草凪君と仲良いですし、他の男子も宝城院さんの話しばかりして・・・本当に何なんですの!?」
「…あのさ、貴方達がさっきから言ってるのは、嫉妬。そんなこと、私に言われても、しょーがないんですけど。」
「っ…。」
「じゃ、私帰るから。全く・・・逆恨みもいい加減にしてほしいわ。」
と言いその場をさろうとする惺來に、
「生意気だって言ってるのよ!!」
と、呼びながらリーダーと思われる女生徒が、惺來に殴りかかってきた。
後ろの方で盗み見をしていた隼人も思わず「あっ!!」と声が出る。
しかし、拳はあたらず・・・
殴りかかった張本人は地面に転げた。
「え・・・?」
気の抜けた声で『何が起こったのかわからない』と言うような顔をしている。
「背後から襲うなんて、卑怯ね。やるんだったら正面からきなよ。」
言葉の最初は笑顔だったが、後半は少し本気の目だった。