「だって斗岳さん優しいし。
汚れた感じが全くしませんから。」


ご飯作ってきます。



そう言って綾萌は去ったから
それ以上は聞けなかったけれど。


俺を優しいと思ってくれる人がいる。


それだけで俺は
頬が緩んでるのが分かるぐらい
幸福感でいっぱいになって。


綾萌が食事ができたと呼びに来た時
少し驚かれたぐらいだ。



「「いただきます。」」

俺が昼は一緒に食べてと
何度も頼んだ甲斐あってか
最近は二人で昼を食べることも多い。


「...綾萌。」


「なんですか?」


「これなに?」


「カレーですね。」


俺が指差すのは確かに昼御飯のカレー。


だけど...


「これ」


スプーンですくって見せたのは
なんか緑の細長いやつ。


「あぁ。
なんだと思いますか?」


俺が聞きたいことが分かった途端
綾萌は悪戯っ子みたいな顔になって。


思い通りになるのは悔しかったけど
わからないから降参する。


「分からない。なに?」


「ふふっ。
それブロッコリーの芯です。」


...え?
これあの固いやつなのか?


「薄く細くすれば食べられますよ。」


そう言って彼女は
パクパク食べていくが...



(あれがこんなに柔らかく?)



俺は謎でいっぱいだった。