私が砂と化して消え去りたくなっている中、シロはあくまで冷静に、「竜崎くん、だっけ」と話しかけていた。


「え?お…おう」

「悪いんだけど、今見たこと、学校では秘密にしてくれないかな。見なかったことにして欲しい」

「え………」

「色々事情があってさ。学校の人にバレると困るんだ」


シロの淡々とした説明に、竜崎くんが戸惑ったように眉を寄せる。

私はそろそろ苦しくて、口を塞ぐシロの手をバシバシと叩いた。

パッと手が離されて、私はようやく深呼吸をする。

「ああ…ごめん。でも、美愛子は黙っててね」

…わかってるわよ。

こういうときは、たぶん私が説明するよりシロが言った方がいい。


私達のやりとりを見ていた竜崎くんは、ぽかんとしてこちらを指差してきた。


「お前ら、まさか……」


付き合ってんの?って言いたいのよね。

ええ、できれば私も、そうであってほしかったけど!!


そう思い、シロを見上げる。

けれど彼は少しの間のあとに、「ああ、うん」と言って、私の方を見てきた。