あたたかい夕日の光が町の建物や草木を照らす。
なんともありきたりな感じで、いつも目にしているような光景。
漫画に書かれている1コマと同じようで、少し笑える光景。
それが彼女の目には広がっていた。

雲ひとつない紅色の空。
これに小鳥でも飛んでいたらもっといい眺めになるんだろうと、彼女は少し文句を心のなかにこぼすのだった。

あるひとつの八百屋の前に到着し、そのなかにはいる。
キャベツや玉ねぎ、ニンジンなどの野菜が彼女の前の棚に広がっている。

「八百屋のおじさーん。こんにちわー」

・・・・・・

音信不通。
大きな声を出して返事がないと少し胸の辺りが痒くなる。それ以前に。まわりに人いなかったことが幸いだった。
きっと先のことを聞かれていたら、顔が真っ赤に染まっていたと我ながら思う。

「おじさーん?おばちゃーん!!・・・誰かいませんかー?」

何度か問いかけるものの、その声に返事がくることはなかった。
少しなかの様子を見てみると、そこにはいつも置かれているテレビや家具はそのままだが、二人が座っている椅子には二人は居らず、聞こえるものといえば放置されたテレビからのザーザー・・・というノイズだけである。

ー八百屋のおじさんたちどこにいったのかな?・・・近くのスーパーで野菜は買うことにしないとなぁ・・・はぁ面倒くさい

文句をこぼしつつ彼女は八百屋から数百メートル離れたところにあるスーパーへと足を運ぶのだった。