なんだったんだろう??




先輩はそそくさと
逃げるように去っていった。




彼らしくもない取り乱した顔で・・・




いや勿論
客観的にいえば、



いつもの≪無表情≫だけど、



あれは先輩の
傷ついてた顔なんだって


私には分かるんだ。





何故?
・・・・・そんなの知らない。
何故か分かってしまう。






まさか先輩が


≪これ以上私に血を見せない≫ようにと


考えてくれていたなんて


私は夢にも思わなかった。






私は、


相手を殴ってしまった瀬名先輩を


怖いとは思っていない。





だって、

瀬名先輩は


殴られても
キレテモ


当然のことを
されたんだ。





≪ユウカチャン≫が
先輩にとっての地雷だったと
知りながら


彼等は
自らその地雷を踏みにいったんだから・・・。





先輩は
それまで
何を言われても
どんなに殴られても
耐えていたんだから・・・。





ただ私は


あの冷たい声が怖かった。



あの悲しそうな顔が怖かった。




血を見るときとは違う怖さに
臆病になってしまう。