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蒔田が転倒してからとろとろ歩いていると、母ちゃんからの電話で弁当を忘れたことに気付いた。

『寝坊して弁当忘れてまったく!!!』

なんて電話口で怒られついてないなと思いながらもコンビニに寄って遅れて教室に入った。


─前言撤回。
──なんてついてるんだ。


ずっと目で追っていた茶色いボブ、ぱっちりした二重、笑うとできるえくぼ、朱色のカーディガン…


俺の横には蒔田あすみが座っていた。


目があって焦って俺に話しかけてきた姿がかわいくて俺の顔も思わずゆるむ。


─絶対蒔田を好きにさせる。

このチャンス逃さない。


俺はこのときそう決めた。