うららかな春の午後、桜色の花びらが風に舞い、道行く人々を魅せている。
 
どの木も、まるで競うように満開だ。
 
確か西行法師が作った歌に、桜に埋もれて死にたい、というような意味の歌があったはずだ。
 
その願い通り、桜の散りしきる頃に生涯を終えたらしい。
その時の西行法師は、どれほど満足していただろうか。
 
やがて、婦人が空を見上げるようにして花びらを目で追っていたかと思うと、それまでの悲しそうな表情とは打って変わって、その瞳には少女のような輝きが見て取れた。