あれは中学三年の時だった。
柄にもなく参考書を読みながら帰り道を急いでいた時、ひとひらの花びらが本の間に舞い降りてきた。
 
私がふと顔を上げてみると、そこは、一面薄紅色に染まっていた。
それが桜であると理解するまでに、意外なほど時間がかかった。
 
絶え間なく散りゆく花びら、風が吹く度に紺色の制服のスカートと枝先を揺らし、そして切ないまでの桜色。
 
その全てが私の脳髄にいっぺんに叩き込まれたような気がした。
その魅力に、どうしても抗えなかった。
 
それからだった。