クリスマスイブ当日。
「そろそろ来るんちゃう?」
沙代は、明美と由加との3人で、健太郎たちが走るはずの交差点で集まっていた。
周りには、同じように彼らを待つ…大勢の女の子たち。
…この中に、健太郎を好きな女は、何人おるんやろ。
沙代は、にぎやかに待つ女の子たちを眺め、視線を落とす。
「あ、来た来た来た!!」
平静を装う沙代の隣で、突然、明美が興奮気味に飛び跳ねる。
一斉に、周りの視線も一点に集中する。
すごい爆音と共に、近づいてくる単車の群。
沙代は急いで、健太郎を探し出す。
そして、目の前を通る瞬間、彼の姿が瞳に映る。
風で後ろへ流れる髪に…キラキラした瞳。
普段、一緒にいるときとはまた違う…すがすがしい横顔。
沙代は、彼の魅力に心を奪われ、口を閉じることさえも…忘れていた。
「カッコイイ!!ほんまカッコイイ!!やっぱ、広也が1番カッコイイ!!」
通り過ぎた後、ざわめくギャラリーの中、明美は興奮してまくしたてる。
そんな彼女をながめて、由加はおかしく笑っている。
その隣で、沙代は、健太郎が残した余韻を胸に、嬉しそうに目尻を緩めていた。