「放せや!!」
強い力で、姉を振り払う彼。
「聖っ!! お父さん…勤めてた会社があかんなって、“一からやり直すから”って帰ってきてくれたんよ!! お父さんが帰ってきてくれたんよ!!」
顔を真っ赤にした母親が、大声で叫んでくる。
聖は、その言葉を聞いて、動きを止めた。
「…すまん。一から…やり直すさかい」
男は、目を閉じて…謝ってくる。
「…なんやねん。…どうしようもなくなって、今度は“助けてくれ”か? …いい加減にせぇや」
あまりにも情けない父親の姿に、聖は脱力した。