「……っ」
聖はこみ上げてくる怒りを抑え、靴を荒々しく脱いだ。
そして、急ぎ足で、奥の部屋へと足を進めていく。
「聖! お父さんが…帰ってきてくれたんよ!」
ガラスの戸を勢いよく開けると、涙を流しながら喜ぶ母親がいた。
そして、母親の前に座り…背を向けていた男が、ゆっくりと振り返る。
「…背ぇ、伸びたな」
振り返る男の顔は、以前よりしわが増え、少し痩せこけているように見えた。