聖は体をよじり、枕に顔を埋めた。
…泣くんやったら、別れたらええやん。
なんで、あんな奴…待つんなよ。
この言葉を、何度…母親に伝えただろうか。
何度…説得しても、母親は涙を見せるだけで、変わってはくれない。
静かな部屋で、聖は悲しみをこらえていた。

「おい、今日来るんか?」
ある日の夕方、仕事の片づけをしながら、聖は拓馬に声をかける。
「いやいやいや、今日は…」