そう言って、聖は無理やり、彼のポケットに押し込んだ。
「なぁ…お前よぉ。愚痴りたいときは、ちゃんと言えよ?」
輝緒は、テーブルにひじを置き、真剣な顔でささやいた。
「愚痴なんかないよ」
小さく微笑みながら、聖はテレビをつける。
輝緒は、そんな彼に何かを言いかけたが、黙々と弁当を食べる姿を見て、開きかけた口を閉じた。

その夜、聖は自分の部屋のベッドで横になり、天井を眺めていた。
瞳を閉じれば、今日の母親の姿が…浮かんでくる。
「…くそっ」