「ありがとうございましたー」
数時間経った頃、店を出た。
海の方から吹く冷たい風が、また全身を凍りつかせる。
…やっぱり冬の海は寒い…
成海さんも身を縮めている。
「次どこ行こっか。海に戻る?それともどこか行きたい所ある?」
「うーん、そうだなぁ…」
俺がきくと、成海さんはうーんと考え出した。
今の時刻はもう4時過ぎ。
…随分と長いこといたんだな…
ご飯を食べきった後も、成海さんとずっと話していた。
お互いの学校での話とか、家での過ごし方とか…とにかく、今までにないくらいにたくさん。
新しく入ってきた客を案内してくる郁也に何度か睨まれたけど、気にせず居座った。
「他に行きたい所ってないし、海に戻りたい」
しばらく考えたあと、成海さんが微笑んで答えてくれた。
「うん、じゃあ行こうか」
もう一度海に向かおうと、ゆっくり歩き出す。
今度は手は繋いでいないけど、さっきより少しだけ距離が近づいたような気がする。