「瑞樹ー!!」



リビングでぼーっと成海さんのことを考えていると、家の外から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。



カーテンを開けて窓の外を覗く。



門の外で母さんがこっちを見て何か言おうとしていた。



「なーにー?」


「机の上にある携帯を持ってきて!もう時間がないから急いで!」



そう言いながら母さんは自転車のカゴに荷物を乗せる。



まったく、人使いの荒い母親だ。


…とは思わないけど、妄想を遮られたのはちょっと残念…



「はい」


「ありがとう!」



小走りで母さんのところまで行って携帯電話を手渡した。



「行ってらっしゃい。気をつけて」


「行ってきます!」



自転車にまたがった母さんは、ペダルを勢いよく漕ぎ出して今日もパートに出かけて行った。



その姿が見えなくなった頃、来た道を戻ろうと玄関の方に体を向けた。




「あっ…!」