「ははは、ありがとう。渡しておくよ」
悔しそうな顔をする郁也に向かって笑って言った。
「…なんか悪ぃな、ついでなんて」
「ううん、おばさんにお礼伝えといて」
「…おぅ」
苦笑いの郁也を横に、箱を紙袋に戻して玄関の棚に置く。
「寒いだろ、上がってく?」
この冷気の中、玄関の外で立ったままの郁也にきいた。
「いや、いい。兄貴に早く帰ってこいって言われてるんだ」
「あ、そうなんだ」
「…それに買い物にも行かねぇといけないしな。…面倒くさー」
「はは、いい親孝行だな」
「うるせぇ」
おばさんに使われたことがよほど悔しいのか、また不機嫌な顔になる郁也。
普段は強気の郁也も、おばさんにはどうしても逆らえない…か。
郁也には悪いけど、おばさんとのやり取りを想像してみると、ちょっと笑えるかも。
「…じゃあもう行くわ。また月曜日にな」
「うん、ありがとう」
玄関から出て家の門のところまで見送る。
一瞬俺に向かって片手を挙げ、郁也は帰っていった。