「瑞樹はさ、その子の何が好きで毎日そんな浮かれて話してんの?」
髪をいじっていた人差し指をそのまま俺に向けて、郁也がきいてきた。
「…何がって…別にないけど…」
「は?それで好きなわけ?」
「…うん…まぁ」
成海さんの何が好きなんて、俺も分からない。
ただ惹かれるってだけで、他に理由はないんだと思う。
「…まぁ俺は別にどうでもいいけどさ、結局今日もその子の好きな人の話してないじゃん」
「あ…」
しまった、また忘れていた…
反対車線のバスに乗って彼女の視線を奪う人物の存在を。
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