「預けたんだから、ちゃんと渡せよ」


「あ、はい…!」



最後に一言残し、彼はわたしに背を向ける。



振り返るなんてすることはなく、この場を去っていってしまった。



…ちゃんと、渡します。



“郁也くんから”ってね。





…あの人、言葉はぶっきらぼうだけど、本当は優しい人なんだ。



瑞樹くんのことを大切に想い、彼もまた瑞樹くんにとっての大切な存在である。



わたしが嫉妬しちゃうくらいの仲だね。





次に彼に会ったときは、もう怖いなんて思うことはない…



…かな?







―――郁也のちょっとした優しさに触れ、心はまだぽかぽか春気分の成海さんでした✩



~柚音の想い~ 終わり。