「俺、頼まれただけなんだけどな」



そう言ってにやりと余裕の笑みを浮かべる、俺の下にいる男。



憎いくらいに腹が立つけど、これが俺の兄貴。




「頼まれた?…どういうことだよ?」



睨みをきかせて問い詰める。



よく似ていると言われる、目の前の整った顔が俺は嫌いだ。



この甘いマスクで今まで何人の女を誘惑してきたのだろうか。



…結局成海サンもそいつらと同類かよ。






「離せ、郁也」



そう一言言われたかと思えば、瞬時につかまれた手首。



強く掴んでいたはずなのに、いとも簡単に剥がされてしまった。