「…成海さん…っ!」



最後にもう一度彼女の名前を呼んだ。



きっと向こうに声は聞こえていない。



ゆっくりと動く車両の中で、何か言いたげに、改札口の俺を見ている。




…さっき、何と言ったのだろうか。



俺の気持ちはちゃんと伝わったのだろうか。



確かめることができないもどかしさが俺の胸を巣食う。




徐々に遠ざかる姿をこの目に焼き付けようと、一時も視線を外さない俺。



窓越しの彼女の瞳から一筋の涙がこぼれるのが見えた。



それを最後に、加速していく電車が俺に背を向ける。



結局会話をすることなく、あっという間に成海さんは去って行ってしまった―――