足に力を入れ、地を蹴る。
減速してくる電車を見ながら、改札口まで一直線。
一番後ろの車両の、一番後ろのドア付近で、
…あの栗色のボブヘアーがふわりと踊った。
ご両親と一緒にホームに立つ彼女。
その姿からの凛とした空気は、初めて見た時のとまるで同じ。
やっと近くなったのに。
…今日でまた遠くなるのかな。
迫りくるタイムリミット。
電車の扉がゆっくりと開いた。
吐き出される少ない降車客と入れ替わりに、数人の乗車客が車内に吸い込まれていく。
彼女の足も1歩前に出た。
「…っ成海さん!!」
閑散とした改札口で、俺は思いっきり叫んだ。