『次は、坂下。坂下でございます』
バスのアナウンスが耳に入った。
俺たちが降りるバス停
坂のふもとにあるから、坂下。
成海さんとはまだほんの少ししか話していないのに、あっという間に着いてしまった。
楽しい時間はすぐ過ぎるって、本当なんだな。
…まぁ、普通に乗っていてもすぐに着く距離なんだけど。
「もう降りなきゃ。早いね」
「あ、うん。そうだな」
成海さんが窓際についているボタンを押した。
『次、停まります』
再度アナウンスが流れ、運転席近くの停車ランプが光る。
だんだん近づく停留所を見ると、何だか急に寂しくなってきた。
成海さんも同じことを感じているように見えたのは、俺の勝手な妄想だろうか。
徐々にブレーキがかかるバス。
わずかに左右に揺れて、停留所の看板のちょうど前に停まった。