07:45
やっぱりいた。
まっすぐと立って前を見つめる女の子、成海さん。
この凛とした姿に一目惚れしてから数ヶ月
彼女の姿に心が踊らないのは今日が初めてだ。
達也を見つめる視線への嫉妬ともどかしさで胸が締め付けられる。
「おはよう」
俺の姿に気付いた成海さんが、普通に挨拶をしてくれた。
「お、おはよう」
彼女の予想外の態度に戸惑いながらも、平然を装って俺も返す。
…怒っているかも、なんて、俺の考えすぎだったかな?
俺と挨拶を交わした後、成海さんは視線を元に戻した。
反対側車線で停車中のバスは、今日はなぜかすぐに発車しようとしない。
それどころか、珍しく乗降中ランプが光っている。
今日は誰か乗客がいるらしい。