海斗くんが俺の耳元に口を近づけてきた。
「ゆずちゃん、すきなひとがいるらしいよ」
小さな声のその言葉がストレートに耳に入ってくる。
…好きな人…ねぇ…
それは達也のことだな。
達也に恋をしているから、幸せそうな顔をしているんだろう。
「そうなんだ…。知らなかった」
海斗くんの鼻をへし折らないように、合わせて答えた。
「ふふん。
あ、みずき、しょっく?」
得意気に笑いながら、俺を心配する顔も覗かせる海斗くん。
「…はは。ショックはもうとっくの昔に味わったよ」
…とは言えない代わりに、残念だ、という顔で俺は笑ってやる。
なんだか切なくなってきた…