“おいで”と手招きしてくれた彼の後を追って、海岸沿いを少し歩く。
「ここから乗ればいいよ」
「あ、はい。ありがとうございます…!」
広いバスロータリーに連れてきてもらった。
「バスはすぐに来るよ。
じゃあ俺はもう行くね」
「あ…」
…もう行っちゃうの…?
「あの…何かお礼…」
「そんなのいいよ。バス停の場所教えただけだし」
「…でも…」
…何だかこれで終わりにするのが嫌だ。
どうにかして引き止めたい。
…だけど、迷惑…かな。
もしかしたら急いでいるのかもしれないし…
「お礼なんていいから、もう間違えるなよ。キミがちゃんと帰ってくれれば、それでいい」
そう言って彼は、渋るわたしに向かってにっこり笑ってくれた。