「ここは華咲海岸。南区の中央駅から走るバスの終点だよ」
「ここも…南区ですか…?」
「ううん。ここは東区だよ」
「……」
…やっぱり隣町だ…
「あ…もしかして、降りる場所を間違えた?」
「……は…はい…」
…間違えたっていうより…寝過ごしちゃったんだけど…
だけどそんなこと、恥ずかしくてこの人には言えない。
「南区に住んでるの?」
「あ…はい。昨日引っ越してきたばかりであまり分からなくて…」
「そうなんだ。…それはかなり遠くまで来ちゃったね」
…え…そんなに遠いの…?
わたし帰れるのかな…
「はは、大丈夫。心配しなくていいよ」
わたしの不安を読み取った彼は、そう言って優しく微笑んでくれた。
…何だろう…
この笑顔、なぜかほっとする。
ついさっきまであった焦りが、この笑顔ですっと抜けた。