キミとの出会いはごくごくフツー。
たまたま同じ中学に入学して。
たまたま同じクラスになって。
最初はただのブアイソでクールを装ってるイヤミな男子だと思ってたのに…
クラスが離れて気付くことがある。
私…、キミがいないと元気がないんだよ──。
「く〜らもとっ♪おっはよぉ♪」
「…また今朝も最初に馬場の顔見ちまった」
「何何?挨拶は???」
「はいはい。…はよー」
う〜〜〜ん♪
今日も10月の澄んだ青空が気持ちいい!
倉本に一番に挨拶できたしっ。
挨拶も返してもらったしっ。
「…いつまで一緒に来るんだよ?」
「だって、隣のクラスじゃん。方向一緒だしー」
「くっついてくんなよ」
靴箱から続く階段を上る倉本の後ろを、ちょこちょこついて行ってみる。
すると、倉本のウザそうな視線とため息をもろに感じた。
でも…、私には分かるんだ。
倉本は本気で私のコトを「ウザい」なんて思ってない。
だって…もうこのやり取り、数え切れないくらいやってるんだもんっ!
きっと…だけど。
そう思わなきゃ、倉本には近付けないしね。
中学2年の私、馬場あかね(ばば・あかね)は、隣のクラスにいる倉本雅樹(くらもと・まさき)が好き。
実は1年の時は倉本と同じクラスだったんだけど、その時はハッキリ言って何とも思ってなかった。
ただの無愛想な、嫌味ばかり言う男子かと思ってたんだ。
1年の時は友達と一緒にそれを突っ込むのが私の役目みたいなもんだったんだけど…
2年になってクラスが離れて、突っ込む機会がなくなった途端、何かこう…寂しいな、なんて…ガラにもなく思ってた。
離れて気付く恋心がある、なんてよくゆうけど。
まさにそれなのかな…?
だって、倉本と話したい、近付きたいと思ってる私がいる。
これが『恋』──?
そんな時に私の想いに気付いていたのが……
「あかねちゃん。おはよう」
「あっ、ななっぺ!おはよー!!」
「あー、やっと馬場から離れられる」
「倉本、またねぇ〜」
「『また』とかねーよ」
あっという間に教室の前だよぉ。。。
相変わらず倉本の別れ際は素っ気ないけど、まーいつものことだから気にしない気にしない。
それよりもななっぺがいた〜♪
ななっぺの本名は、細井奈々(ほそい・なな)。
同じクラスで仲がいい友達。
1年の時も同じクラスだったから、友達歴は1年半ってトコかな?
「毎日毎日よく懲りないね」
「えっ!?何の話?」
「倉本だよ。教室に入る倉本から、『ウザい』オーラがすごい出てたんだけど」
「そーかなぁ?でもあーゆー人には押していった方がよくない?」
「まあ…倉本も馬鹿じゃないし、薄々気付いてると思うけど」
「んん?何て?」
「いや……。あかねちゃんのやりたいようにやっていいと思うよ」
ななっぺには夏休みから付き合い始めた先輩の彼氏がいる。
そのせいだけじゃないとは思うけど、割と落ち着いた性格なんだよね。
倉本の「ウザい」オーラも見えちゃってるみたいだし。
だけど…
私が倉本に想いを寄せているって、一番初めに気付いたのもななっぺなんだ。
夏休みの終わりにいきなり電話で聞かれてビックリした。
*****
*****
『あかねちゃんさぁ…、倉本のコト好きでしょ?』
「えぇ?くっ、倉本のコト…?」
突然ななっぺに核心を突かれたようで、ビックリ…とゆうよりも心臓が跳ねて出てきそうだった。
確かに倉本のコトを好きかもしれないって思ってたけど、何でななっぺがそんなコトに気付いてんの?
「どーしてななっぺがそんなコトを?」
『じゃあ聞くけどさ。何で夏休み中、塾の夏期講習に通ってたの?』
「え?それは親からケータイ買ってもらうためで……」
そんなに塾の夏期講習が不審に思われるコトかなぁ?
確かに夏休み前に倉本が塾に通ってるって小耳にはさんで、「通ったら倉本に会えるかな〜」なんて淡い期待をしてたのは確かなんだけど。
でもあくまで淡い期待だしっ!!
そりゃあ…、塾で同じクラスになれたらってちょっとは思ってたけどさ。
ちょっとは。
すると、耳に当てていたケータイから大きなため息が聞こえてきた。
『あかねちゃん、無理に理由を付けなくていいよ。私はいつもあかねちゃんの側にいるからさ、何となく気付いてたんだけど。あかねちゃんの会話、倉本に関するコトかなり多いよね』
「そっ、そんなことないっしょー?私、倉本のコトなんて話してた?」
『うん。『倉本ってどんな漫画読んでるんだろ?』とか言ってたり、『倉本絶対彼女できない性格してるよね』とか、他には……』
「あ〜っ!!もーいーって!恥ずかしーじゃん!」
『じゃあ、倉本が好きって認めるんだね?』
「何か尋問みたい。好きってゆーかぁ………、好きなのかなぁ???」
自分で言ってみて、ちょっとだけ顔が火照った。
心臓が少し速く、ドキドキいってる。
好き…。
私が、倉本のコトを、好き……。
「『好き』ってゆーか、好きだよ。うん、好きだと思う」
『やっぱり。やっと認めたね』
「ななっぺは鋭すぎるよ〜。でもそれなら回りくどい感じじゃなく思いっ切り倉本に猛アタックしてみよっかな〜」
『でも倉本さぁ、つい最近まで好きな人いたみたいなんだけど…それには気付いてた?』
「え?」
倉本に、好きな人がいた…?
…そーいえば、たまに運よく話せても、素っ気ないとゆーか。
いや、素っ気ないのは元からなんだけど、何か視線が私の方を向いてないとゆーか、上の空とゆーか…。
何て表現したらいーのか分かんないけど、私の目を見て会話をしてないなって感じは前から受けてた気がする。
それでもいつかは私の方を見てくれるハズって思って話してたつもりなんだけど。
「何でななっぺが倉本の好きな人のコトなんて知ってるの?」
しかもつい最近まで…って、時期まで知ってるなんて、ななっぺの情報網、スゴすぎ。
『昨日勉強会行ったら、来ない予定だった倉本が後からやって来たんだよ』
「ええ?倉本が?」
実は私達は、主に1年の時同じクラスだった友達同士で定期テストの前とか長期休みの終わりとかに集まって勉強会をよくやってるんだけど、私は急用で、倉本は確か塾の講義があって欠席してた…ハズだった。
だけど、倉本が勉強会に顔を出してたなんて。
『言いにくいけど、どうせ分かることだしハッキリ言うよ。倉本、柚のことが好きだったみたいだよ。でも昨日、ちゃんと断られて、本人も納得して帰っていったけど』
「ゆっ、柚のコトが好きだったぁ!?」
杉田柚(すぎた・ゆず)も、私の友達。
柚は今は倉本と同じ隣のクラスなんだけど、1年の時には同じクラスで、同じ小学校出身の柚とはななっぺよりよくしゃべっていた…と思う。
もちろん柚も勉強会のメンバー。
…とゆーより、うちの学年でも成績優秀を誇る柚失くしては、勉強会が成り立たないと言っても過言ではない。
まさか倉本…、柚のコトが好きだったなんて。
柚は私とは対照的に、すごく大人しくて、女の子っぽくて…。
しかも勉強もできる。
……倉本、あーゆーコが好きだったんだ………。
「……てか、柚が振るも何も、柚には瀬川って彼氏がいるじゃんっ!!」
そーだよ!!
柚はこれまた1年の時に同じクラスで、今も私達と同じクラスの瀬川拓(せがわ・たく)って男子と付き合っている。
しかも瀬川は倉本の友達。
瀬川は柚とは違ってうるさい男子だから、ハッキリ言ってどーやって好き同士になったのか私の中でも未だに謎なんだけど、本人達は幸せそうだからまぁいっかぁ…なんて思ってたんだけど。
まさか倉本が柚に言い寄ってたなんて…思いもよらなかった。
『あかねちゃんもそこまでは気付いてなかったんだね』
「いやまあ…、上の空だなとは何度か思ったけど、柚のコトだとまでは思わないじゃん、フツー」
『柚にはちゃんと倉本への気持ちを伝えておいた方がいいんじゃない?』
「うん…。柚は大事な友達だし、ちゃんと言うよ。…てか、わざわざありがとね」
ああ…、驚きで何も考えられないかも。
まさか倉本が柚を好きだったなんて。
夏休み、もーすぐ終わりそうなのに…受け入れられるかなぁ?
*****
*****
でも結局私のポジティブな性格は、その事実をあっさりと受け入れていた。
私は柚とちゃんと話して、倉本が好きなことも伝えた。
すると柚は優しく微笑んで、「応援するよ」って言ってくれたんだ。
「てかさぁ、もう10月も終わりだよねぇ?クリスマスまであと2か月かぁ」
「クリスマス意識するなんて、ホントあかねちゃんも乙女になったよね」
「べっ、別にいーじゃん!てか、ななっぺは彼氏がいるんだし、クリスマスは安泰じゃん。私はクリスマスまでに…」
「クリスマスまでに倉本に告白するの?」
「うっ、うん…、できれば」
だって、クリスマスに一人は嫌かも。
せっかく好きな人がいるのに、チャンスがあるなら告白ぐらいしなくちゃ。
それに、2学期中…というか、今年中に何とか進展させたい。
倉本とのこの関係を。
「2か月もあるんだから、何とかなるでしょ」
「2か月『しか』だよ〜。ああ、焦るなぁ」
「何だかんだ言って、倉本の『ウザい』オーラ気にしてるんじゃん。あれから逆転するのは確かに難しいけどね」
「ななっぺ…、『何とかなる』とか言ってた割には悲しい事実を突き付けてくるね。ま〜、頑張るしかないかぁ」
「それでこそあかねちゃんだよ」
ウザくないウザくない。
私はウザいなんて思われてない。
だって、夏休み前から感じていた倉本の『上の空』みたいな感じもほとんど感じなくなったし。
だから、絶対大丈夫。
いつか私はちゃんと倉本に告白するんだ。
「私の彼氏になってください」…って。
――
―――――