何も言えなかった。

言葉が見つからなくて。



「…そろそろ帰るか。」


「うん…。」



ゆっくりと歩き出す。

2つの黒い影がのびてゆく。



…私も、言わなきゃいけないことがある。


言わなきゃ、蒼と本気で向き合えないから。



「ねぇ…朔弥。私もね、好きだったよ。」



独り言を言うような感じで、そう言った。

ちゃんと朔弥の耳に届いただろうか。


しばしの沈黙。