「…ねぇ、式までの間に、弾いてみたい曲があるんだけど、一緒に弾かない?」
ー私達の、はじまりの曲。
"結婚式" という、私達の節目の日に、大切なはじまりを思い出して、真似てみたそれ。
「…どうしてかな?不思議となんの曲か想像つくんだけど、当てていい?」
私のいたずらに気づいてくれた緒斗くんが、たのしそうに笑いながら、鍵盤に指を添えた。
返事を聞くよりはやく、スッと息を吸い込んで弾かれたその曲。
冒頭の2小節で、誰の何の曲だかわかってしまう。
「これでしょ?モーツァルトの、2台のピアノのためのソナタ」
ー私達の、曲。
はじまりであって、間違いなくこれからも続いていく、大切な曲。