ぎゅっと。

その手を握る指に力を入れて見上げる私に、緒斗くんは笑った。

少しさがる眉に、細くなる瞳。

ゆらゆらと揺れてみえるのは、私の気のせいかな。


「…本当に、心陽には敵わないな」


…いつもより、少しだけ掠れた声。


届いた時には、すでに緒斗くんの腕の中にいた。

ぐっと引き込まれるような、穏やかな深いやさしさがあふれでるそれは、緒斗くんが弾くピアノに似てる。

どこかあまえたモードのその背中に手を添えると、緒斗くんが体を起こして、私の頬にふれた。


見返すと、いつになく真剣な顔。

逸らすことなんてできないくらい、真っ直ぐにみつめてくる瞳。


…捉えられたこの感覚を、たぶん、私は知ってる。



「一生分以上に、幸せにする。

俺を、選んでくれてありがとう」