幸せでいられた時は、ただ嬉しかった。

はるが知っててくれる私が。
知らなかった私を、見つけてくれるはるが。


…でも今は、みつけてほしくなんてなかった。



「…だったら何?」

「…は?」


はるさえ、気づかなかったら。
見過ごしてくれたら。

まだ私達は、一緒にいられたかもしれないのに。



「私と先生がキスしてたからって、それが何なの?
自分のことはいいの?特別なの?」


ーはるには、聞いちゃダメ。

"あの日" から、思い続けてきたのに、一度栓がゆるむとバカになったみたいに止まらない。


「意味わかんねーよ。なんで今、そこで俺の話になるわけ?」


「わかんなくないでしょ?

はるだって、旭日先生と同じことしてたクセに、どうして私だけが責められなきゃいけないの?それこそ意味がわからない。

はるにそんな資格なんてないじゃん…!」



吐き出したそれは、

夢の中で、何度も霞先生と逃げた口づけよりも、涙の味がした。


はるの前で泣きたくなんかないのに、
笑顔でいたいのに。

"あの日" のお弁当箱よりも、ぐちゃぐちゃと視界を滲ませていく。



…ねぇ、はる。

もしも私が言わなかったら、旭日先生との関係を、一生、隠し続けるつもりだったの?