「…っ!」
腕を引く、はるの力が強くて。
手を繋ぐ時も、その手を引く時も、
肩や腰に手を添えて引き寄せてくれる時も、
ぎゅっと、隙間をなくすように、力いっぱい抱き締めてくれる時でさえも、
やさしくしてくれていたんだと知る。
…こんな時になって。
「してないよ、する訳ないじゃん…!
なに?はるは私のこと信じられないの?!
一口に関係を持ったなんていっても、別に恋愛のことだけじゃないでしょ?!」
"あの日" 、旭日先生とはるの密会をみつけて、先生と夢の中に溺れた最初の日。
どんなに奥深くまで沈もうと、はるの前では笑顔でいるって決めた。
悟られないように、手放されないように。
今まで以上に、いい彼女でいなくちゃと、心の中に何枚も何枚もフィルターを重ねて。
キレイな私だけが、はるの隣にいられるように耐えてきた。
醜い感情ばかりが溜まったそれは、消える訳ではなく、フィルターに溜まるだけ溜まって、毒だけ増やして溢れ出る。
その毒気を感じてか、無意識か。
私の言葉に、はるが項垂れて微笑する。
…掴まれていた腕から、はるの熱が消えた。
「あぁ、信じらんねーよ。
だって深詞、早口になってんじゃん。
自分で気付いてねーの?ウソつくときとか苛立ってる時、捲し立てるように話すクセ」
「……っ!」