分も刻まない間にした、しがない覚悟も、
開きっぱなしだった入り口に立つその姿に、
終わらせたくないと思ってしまう。
「…今のどういうことだよ、深詞(みこと)」
だけど、音になった彼の言葉を聞いて、
もうそんなこと、願えないところまできてしまったんだと思い知る。
「…はる」
ー日向 陽希(ひなたはるき)
私の、大切なひと。
入口と私。
その間に立つ霞先生と旭日先生を通りこして、真っ直ぐに突き刺してくるはるの視線。
私とは正反対の、透けているような茶色い瞳に、全てを見透かされているかのようで。
地球上の重力がぜんぶ、私をめがけてのしかかってくるみたいだ。
足が、床にぬるぬると吸い込まれていく。
そんなこと、あり得ないのに。