ーー…



"あの日"

先生を中庭でみつけた、あの日。

うららかな日差しの中で、拾ったのは…
拾われたのは、霞先生だけじゃなかった。



中庭に向かう少し前。

昼休み休憩を知らせるチャイムが鳴って、付き合って半年の彼と一緒にお昼を食べようと席に向かうと、

彼は、iPhoneを片手に頬杖をついたまま、窓の外を見つめていた。


…学校の中央にある中庭。



視線を追っても、誰もいないし、何もない。

いつもと変わらぬ光景が広がっていたから、ただ、ぼーっとしているだけなのかなって、声をかけたんだ。


『はる?今日お弁当つくって…』


きたから一緒に食べよう。もう昼休みだよ。

って、言いたかったのに。



『わりぃ、ちょっと…!』


突如、ガタンっと。

大きな椅子の音を立てながら、あわてて立ち上がったかと思えば振り向いて。

私を認識したのかしてないのか、わからない早さで、私を押しやって余所者にして。

私の知らないところへ駆けていってしまった。



…残されたのは、はるが立ち上がった勢いで倒れた椅子と、

はるが、私を気にも止めずにぶつかってきた、その拍子に、落としてしまったお弁当。


『…ちょっと、って…なによ』


ぐちゃぐちゃのまま投げ出された、床に転がるはるの好物と、

同じようにぐちゃぐちゃな、私のキモチだった。