「いや…、」


胸を締めつける醜い感情。

まるで毒でも忍ばすように、動けないでいる先生の手を、キツく握った。


誤って掴んでしまった先生の左手から、
指輪の冷たさがしみる。

その冷たさが、私を置いて離れていくと思うと、たまらなく痛くて。全身が軋んだ。


本音が映し出された先生の瞳が私に向けられたけれど、優しくなんか、してあげない。



言ってあげてよ。


自分の“罪”は隠しておいて、

惨めで可哀想な、裏切られた被害者を見事に演じてる、この女に、ハッキリと。


お前と同じことをしただけだ、って。
何も問題はないだろう、って。


“罪“の深さを分からせてやってよ、先生。


「……っ」


“傷”を追ったのは、私達でしょう…?